株式会社イマジネネイション・プラス

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『私は十五歳』

文:  アズ・ブローマ
絵:  なるかわ しんご
監修: 駒井 知会・指宿 昭一
制作: 中川 たかこ 

ISBN: 978-4-909809-59-9
ページ数: 40ページ
サイズ: 215 x 275 x 10mm
本体価格: ¥1,700
シリーズ名: a sailing boat book
刊行: 2024年8月31日

試し読み

原案: アズ・ブローマ

自国では迫害を受ける危険があり、難民として来日したものの難民認定されずに在留資格を失い「仮放免」となっている高校生。

 

絵: なるかわ しんご

1989年生まれ。24歳の時に子どもの本に関わりたいと「なかがわ創作えほん教室」に所属し現在に至る。絵本・商業イラストなど制作をしながらワークショップなどを全国で行う。2018年からは特定非営利活動法人ひだまりの丘の理事を務める。育児から教育分野で子どもや親に向けてアート事業を行っている。絵本に『きみが うまれた ひ』『ちいさな しまの とりの おはなし』(イマジネイション・プラス)がある。名古屋市名東区在住。二児の父。

 

監修: 駒井 知会

弁護士。東京大学・同大学院卒業後、イギリスに留学。オクスフォード大学・LSE両大学院で国際難民法の研究をしている途中で、日本で難民支援を行う弁護士になろうと思い立ち、帰国して司法試験を受ける。主に難民認定申請者の支援、入管問題に取り組む。2021年3月に名古屋入管で亡くなったウィシュマ・サンダマリさんの遺族の代理人弁護士を指宿昭一弁護士らと共に務める。関東弁護士会連合会外国人の人権救済委員会元委員長、東京弁護士会外国人の権利に関する委員会元委員長。現在は「入管を変える!弁護士ネットワーク」共同代表など。2020年5月、指宿昭一・高橋済両弁護士らと、「仮放免の子どもたちの絵画展」を企画。同展は、2回目からは作文の募集と展示も始める。

 

監修: 指宿 昭一

1961年生まれ。弁護士。筑波大学で大学を民主化する闘いを行い、卒業後、労働運動などの社会的運動に参加する。27歳の時に労働者の権利を守るために弁護士になると決め、司法試験を17回受けて、46歳で弁護士になる。弁護士として、労働者や外国人の権利を守る仕事を行っている。2021年3月に名古屋入管で亡くなったウィシュマ・サンダマリさんの遺族の代理人弁護士。著書に「使い捨て外国人 ~人権なき移民国家、日本~」(朝陽会、2020年)がある。東京都新宿区在住。

 

制作: 中川 たかこ

1971年三重県生まれ。空とぶロバ出版代表、なかがわ創作えほん教室主宰。絵本専門店メリーゴーランド四日市店主増田喜昭氏に師事。名古屋を中心に、「えほん作家と子どもをつなぐ」を合言葉にしてワークショップや展示即売会などを開催している。

絵本の内容(出版社より)

自国では迫害の恐れ、そして命の危険があるために、安心して暮らしたいと願って日本へ来た家族。しかし日本で難民として認められず、しかも在留資格も認められずに「仮放免」となってしまいます。この家族に高校生のアズ・ブローマさんがいます。ブローマさんは「仮放免の子どもたちの絵画作文展」向けに「私は十五歳」という作文を書きました。「仮放免」は生活が制限されているために、ごく普通にできることもできないのです。例えば働くことも、また自分の住んでいるところからの移動などです。この作文ではそのような普通のことが「自分の夢」として語られています。この絵本を通して「仮放免」というものに関心を寄せていただきたく出版することとしました。

 

監修の弁護士の先生より

駒井知会先生より

日本で生まれ育って、あるいは幼い頃に親に手を引かれて来日して、在留資格はないけれども、日本を離れられない重い事情を背負った子どもたちがいます。たとえば、親の祖国に送還されれば迫害の危険が待っている難民の子どもたち。あるいは、日本社会に生まれ育ち、日本の学校で学んできたので、日本語以外の会話や読み書きが困難な子どもたち。家族の中で国籍がバラバラのため、送還されれば家族が空中分解してしまう子どもたちもいます…。

彼らが置かれている「仮放免」という立場は、非常に過酷です。健康保険も就労許可も生活保護もない。暮らしている都道府県外に出るのにも入管の許可が必要です(許可されない場合もあります)。いつ親が収容されてしまうかも分からない。いずれ自分も大人になれば収容されてしまうかもしれない。人間らしく生きることの許されない環境で、10年、15年と育っていく中で、子どもたちは徐々に自分たちの置かれた異常な境遇に気づいていきます。そして、先の見えない苦悩を人知れず抱えていくことになるのです。

2022年11月、自由権規約委員会は、日本に暮らす仮放免中の人々について、「就労や収入を得る選択肢のない『Karihomensha』の不安定な状況について、引き続き懸念を抱いている」と言明しました。その「総括所見」の中で、“KARIHOMENSHA”は、日本語のままローマ字化されて、「仮放免者」に対する日本政府による非人道的な施策が国際的に知られるところとなったのです。更に、同委員会は日本政府に対して、仮放免者に「必要な支援を提供し、収入を得るための活動に従事する機会の確立を検討すること」を勧告しました。

2023年6月の国会で、多くの市民の声を無視する形で入管法の改定案が強行採決され、2024年6月に施行されましたが、新法下で仮放免許可制度の後継制度とされる「監理措置制度」は、当事者を厳しく監視して入管に報告する重い法的義務を負う「監理人」を当事者が自分で探して来ないと申請さえできない(つまり原則収容される)制度となりました。更に「監理措置」のもとでも退去強制令書の発付された人々に対して就労許可は全く与えられず、退去強制令書を受けていない人々にも、2024年7月半ば現在、どの程度就労許可が出るか全く未知数です。日本政府は、この法改定を行うことで、自由権規約委員会の勧告にはっきりと背き、真正面から対決する姿勢を示したのです。

2023年8月、法務大臣は、仮放免の子どもたちの一部に在留特別許可を与える方針を発表しました。しかし、この新しい方針でも、在留特別許可を与えられずにこぼれ落ちるお子さんやご家族の類型が多数出て来てしまい、実際、この文章を書いている2024年7月半ばの時点で、まだ在留特別許可を与えられていないお子さんたち・ご家庭が目立ちます。また、同じ家族の中で、全部ではなく一部の人だけに在留特別許可を与えられたご家庭が幾つもあり、送還実施に伴って家族がバラバラにされてしまう恐怖に脅えている子どもたちもいます。

在留資格を真に必要とする子どもたち全員とその家族が、取りこぼされることなく在留特別許可を速やかに与えられるために、私たちは、2020年5月、2022年8月、2023年11月に、仮放免の子どもたちの絵画作文展(2020年は絵画展のみ)を企画しました。2023年の作品展のテーマは、「わたしの夢」にしました。先行きの見えにくい境遇に置かれた仮放免の子どもたちに、このテーマで作品を募集することは残酷かとも思いましたが、作品を見た日本市民の方々が、彼らの夢がかなうようきっと力を貸してくださる、という祈りをこめて、このテーマを選び、自由課題の作品も歓迎いたしました。

「私は十五歳」は、この2023年の作品展に出品していただいた作文です。どうか皆さま、誤った入管政策のもとで極限的な環境でも夢を捨てずに生きる子どもたちの作品に接して、もしもよろしければ、彼らの明日に光を求める、私たちの列に加わっていただけましたら望外の喜びです。

入管を変える!弁護士ネットワーク 共同代表 駒井知会

 

 

指宿昭一先生より

「仮放免」の子どもたちがいることを知ってください

「わたしは15歳」という作文を書いた高校生は、「仮放免」という状況にあります。「仮放免」というのは、「本当は、入国在留管理局(略称「入管」)という施設に『収容』されて、日本から『強制送還』されるはずの人を、一時的に、収容施設の外に『仮』に『放免』する。」ということです。日本には、こういう「仮放免」の子どもたちがたくさんいます。2022年末の時点で、約300人の「仮放免」の未成年者がいました。

なぜ、彼らは、「仮放免」になったのでしょうか? 外国人が日本で暮らすためには、在留資格というものが必要です。両親が、在留資格のない外国人だと、その子どもも在留資格はないことになります。そうすると、子どもであっても、強制送還の対象になります。強制送還の対象になっても、それに応じられない事情がある場合があります。たとえば、両親が、自分の国で政府に反対したため、政府から迫害を受けて日本に逃げて来たような場合です。両親と子どもが一緒に、自分の国に強制送還されてしまうと、両親はその国で政府に捕まえられて、牢屋に入れられたり、拷問を受けたり、殺されてしまう危険があるのです。

自分の国の政府から迫害をされる恐れのある人は、日本の政府に「難民」だと認めてもらえれば、強制送還されずに、日本で安心して暮らすことができます。ところが、日本の政府は、「私は難民だ」と主張する人たちを、なかなか「難民」だと認めようとしません。そのため、強制送還に応じるわけにはいかない外国人の家族が「仮放免」という不安定な状態で、暮らさなければならないのです。

親が在留資格を失ったため、その子どもも在留資格を失ってしまうこともあります。その場合、子どもが日本で生まれていたり、小さいころに日本に来たために、日本語しかできず、日本の学校で勉強をしてきたため、急に自分の国に帰って、暮らすことが難しいことが多いです。そういうときには、子どもと親に、特別に在留資格を与える制度があります。ところが、なぜか、日本の政府は、なかなかこのような家族に対して、在留資格を与えようとしません。そのため、やはり、外国人の家族が「仮放免」という状態で暮らすことになります。

「仮放免」の人は、施設に収容されませんが、自由があるとはいえません。大人も子どもも働くことが禁止されます。誰かからお金をもらったり、借りたりしないと生活ができないのです。もちろん、高校生でもアルバイトはできません。将来も、「仮放免」のままだと、就職することもできません。

そして、「仮放免」の人は、国民健康保険に加入できないため、「保険証」が持てません。そのため、病院に行くと、「保険証」がある人に比べて3倍から7倍程度のお金を払わなければなりません。「仮放免」の人たちは、病気になっても、できるだけ病院に行かないようにがまんをしています。そして、「仮放免」の人たちは、勝手に、住んでいる都道府県から外に出ることができません。となりの県に行くためには、入管の許可がいります。遠足、修学旅行、部活動の試合でとなりの県に行くためには、入管まで行って、許可を得なければならないのです。「旅行に行く」という理由でとなりの県に行こうとして、許可をもらえないこともあります。

「仮放免」の子どもたちは、特別な子どもたちではありません。日本で生まれるか、小さなときに日本に来て、日本の保育園か幼稚園に行き、小学校に行き、中学に行き、高校に行っている子どもたちです。小さな子は、自分に在留資格がないことを知らないし、「仮放免」だということも分かりません。例えば、小学校か中学校の修学旅行に行くときに、先生から、「保険証のコピーを持ってきてください」と言われて、自分は「保険証」が取れない「仮放免」だと気づいたりします。

この子どもたちは、何も悪いことをしていません。責任もありません。それでも、「仮放免」なのです。そういう子どもたちがいることを知ってください。そして、どうすれば、「仮放免」の子どもたちが、「仮放免」ではない普通の子どもになれるのか、一緒に考えてください。

弁護士 指宿 昭一

 


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